【プロフィール】
水落 奏(みずおち・かな)
日本赤十字看護大学看護学部卒業後、日本赤十字看護大学大学院看護学研究科国際保健助産学専攻修士課程実践コースに入学。東京都出身
趣味:美味しいものを食べること
座右の銘:雲の上はいつも晴れ
小児看護学実習での体験から助産師を目指す
もともと看護師を目指して大学に入学しました。
2年生からコロナ禍に入り、実習に行く機会が減った中、3年生の時に小児看護実習に半日だけ行くことができました。
そこでは、退院後「家族と一緒に過ごす」という選択肢がなく施設を探している、先天性疾患を持つ女の子と関わりました。
妊娠中から今に至るまでの間に、ご家族とその子がどのように過ごしてきたのかと考えた時に、妊娠期から専門職として関わることができたら他の未来もあったのかもしれないと感じ、妊娠期から継続的に母子・家族と関わることを目指したいと考え助産師が浮かび、3年生の夏ごろに進学することを決めました。
助産師というゴールを目指すためにはさまざまな選択肢がありますが、私は研究を通して何か一つ興味のあることを探求したいという思いから、大学院に絞りました。
実際に進学されている方にお話を伺ったり、他の大学院のweb説明会に参加したりして情報収集し、進学先を検討しました。
実習・国試勉強との両立 いつ始めても早くはない受験勉強
大学院によって試験科目が異なったり、英語の試験ではなくTOEFLの点数を求められたりするので、3年生から準備し始めることをお勧めしますが、進学という目標を持ちつつも、まずは目の前の実習一つ一つにしっかり臨むことが大切です。
4年生になると国家試験が視野に入ってきましたが、大学院に向けた勉強を国家試験対策の1つと考えていたので、大学院進学が決まる夏ごろまでは母性看護やその延長線上の助産学の勉強をメインにして、受験が終わってから他の領域や国家試験勉強を本格的に始めました。
私たちの年の入試は、助産や母性看護の試験と小論文、面接でした。
英語が試験にある大学院が多いのでその対策も必要ですし、小論文はぶっつけ本番で書けるものではないので、いろいろなテーマを想定して過去の傾向を見ながら対策し、試験の前に何回か先生に添削していただきました。
小論文を書く際に必要な自分の考え方を持っておくためにも、一つ一つの実習にしっかり向き合っていく必要があると感じています。
コロナ禍の学部時代を乗り越えた大学院生のリアル
学部時代の多くがコロナ禍だったことから、いわゆるキャンパスライフをあまり経験できなかったので「毎日キャンパスに通うこと」それ自体が新鮮です。
それ以上に、本学以外の環境で学びや実習を積み重ね、多様な考え方を持つ仲間たちと共に学びを深め合い、吸収できることに喜びを感じています。
広い視野での学びを重ねるごとに、助産師の可能性を感じ、助産師としてだけでなく看護職として、人として、多くの刺激を受けながら充実した日々を過ごしています。
13人いる同期は本学の院生で最も多い領域で、チームワークを発揮しつつ、先輩方とも切磋琢磨して共に助産学を学び合う仲間として強い絆でつながっています。
また、1年生で履修する研究論や看護政策などの共通科目では、他領域の院生と受ける授業も多く、プレゼンを考えたりグループワークの機会をきっかけに、院生室でも情報共有やディスカッションをするなど、自然と横のつながりが構築されているように思います。
実習で深まる学びと焦点化する助産師像
本学に進学してよかったことの1つが、実習を通して「継続ケア」に関われることです。
生まれた翌日から1歳までと半年までのご家族と関わっています。
継続ケアにはもともと関心があったので、実際に関わることで発達を含めてご家族の成長や変化を学ぶことができます。
他の大学院では1ヵ月程度の関わりが多いと聞くので、本学で学ぶことの強みだと感じています。
また、1月の実習では夜勤を経験しました。
お産は時間を選ばないので、日中に行うケアと、夜間に行うケアは異なります。
例えば、夜間に陣痛を強くしようという時に、お母さんが動くことも一つの選択肢ですが、夜間は人として眠くなる時間帯でもあるので、日中を見据えて今何するべきなのかという視点も身につきました。
そうした思考は夜勤実習前に日勤の実習に行っていたからこそ得られたものなので、このような実習スケジュールも魅力の1つだと思います。
助産院での実習も経験し、そこでの助産師さんの関わり方にも魅力を感じています。
今後は病院に就職する予定ですが、病院では助産院と違い環境的にお母さんの要望を実現することが難しい部分もあります。
しかし、関係性の構築や言葉選び、お母さんが「大切にされている」と感じられるような関わり方から、今後自分がどこで働いてもこうありたいという助産師像の根幹を見つけることができました。
お産の数は年々減少していますが、助産師として女性の一生を支えることや、ジェンダーのことも含めて活動の幅が広がっていくと考えており、将来そのようなことにも携われたらとも実習を通して思っています。
修士論文のテーマ
出産がどのような体験だったのかを振り返る支援の研究をしたいと考えています。
助産院実習で、お母さんたちが自分自身が体験したことを書き綴っていく「お産ノート」の存在を知りました。
ノートに書くことでどのような体験だったかを文字で想起することができ、他の方が書いたものを見て自分の体験と結び付けることもできることから、ノートというツールでお母さんが書くことに意義があるのではないかと考え、インタビューしたいと考えています。
助産院実習に行ったからこそ興味が湧いて明確化した研究なので、実習での学びを還元していきたいと思います。
カンボジアで体感する国際保健助産学
希望者だけですが、1年生の夏に2週間、国際保健助産実習でカンボジアに行ってきました。
現地の赤十字を訪問したり、実際に病院やJICAなどの支援団体を訪問し、母子保健についてさまざまな視点から学ぶことを目指したものです。
実習前に、カンボジアの場所や人口などの基本情報、出生率などの統計や保険制度・教育状況についてさまざまなことを学んだことで、現地での学びが深まりました。
また、実習後は毎日先生方も一緒にディスカッションの時間を持ち、助産師として何ができるのかという視点で考えることができました。
帰国後はレポートにまとめ、学びを発表する機会もあり、カンボジアに行かなかった同期とも共有し全員でディスカッションすると、新たな視点が出てきたことも発見でした。
カンボジアでの体験が、今も日々の学びにつながっていると感じています。
指導教員の笹川先生の魅力
研究指導教員の笹川先生は、エルサルバドルで研究者として活動をしており、現地に足を運んでそこで助産者として何ができるかを考えているグローバルな方です。
ゼミでは毎回国際的な視点で示唆してくださったり、英語論文を紹介してくださったりするなど、実際に現地に赴いている方のお話を伺いながら研究できることに魅力を感じています。
助産に興味を持つ学生・看護師の方たちへのメッセージ
周りが就職する中で、ストレートで進学していいのかという迷いから、助産師に興味がありつつも就職した友人が少なくありません。
興味がある時に進学するからこそ、それが発展していくと実感しているので、興味の種をそのままにせず、自分の気持ちに正直に進学してみることも1つだと思います。
大学院に進学したことで今まで知らなかった助産師の可能性を感じ、忙しい中で自分とも向き合う時間を持つことができました。
働いている方が「今の自分はこれでいいのか」「あの時もっとできたことがあったのではないか」と感じる疑問こそ研究に必要な思考だと感じています。
「こういう研究がしたい」という明確な理由がなくても、大学院に進学することで自分のことを見つめ直したり、たくさんの仲間と共に今までと違う視点から看護を考えることができるので、進学を含めさまざまなキャリアの選択肢を検討し、自分自身が納得のいく道を見つけていただきたいと思います。