准看護師は看護師と比較されがちですが、なぜそのように言われてしまうのか疑問に思う人もいるかと思います。
准看護師と看護師では大きく仕事内容はかわらないものの、違いがあるのは確かで、資格取得方法も異なります。
そこで、本記事では准看護師と看護師の取得方法の違いから、准看護師と看護師では仕事内容に違い、さらには准看護師ならではの悩みも紹介していきます。
結論からいうと、准看護師から看護師へのキャリアアップも可能ですが、まずは准看護師と看護師の違いがわかる内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
准看護師と看護師の違い
准看護師と看護師の仕事内容には大きな違いはありませんが、以下の2点で違いがあります。
- 資格取得までの流れ
- 仕事における責任と役割
それぞれについて詳しくみていきましょう。
資格取得までの違い
准看護師と看護師はそれぞれの資格取得までの道のり、資格発行元が異なります。
先に准看護師についての資格取得までの詳細は以下になります。
准看護師 | |
中学卒業後看護師を目指す場合→ | 准看護師養成所2年
高校衛生看護科3年 いずれかへ進学 ↓ 准看護師試験 ↓ 准看護師資格取得 |
高校卒業後看護師を目指す場合→ | 准看護師養成学校2年
↓ 准看護師試験 ↓ 准護師資格取得 |
資格取得までの単位・時間 | 1,890 時間以上 |
免許の発行先 | 都道府県知事 |
合格率 | 98.2% |
参考:「令和3年度准看護師試験の実施状況について」の訂正について
続いて、看護師免許取得までの詳細になります。
看護師 | |
中学卒業後看護師を目指す場合→ | 5年一貫看護師養成課程校
↓ 看護師国家試験 ↓ 看護師国家資格取得 |
高校卒業後看護師を目指す場合→ | 看護大学4年
看護短大3年 看護師養成所3年 いずれかへ進学 ↓ 看護師国家試験 ↓ 看護師国家資格取得 |
資格取得までの単位・時間 | 3.000時間以上 |
免許の発行先 | 厚生労働省(国家資格) |
合格率 | 90.8% |
参考:第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表|厚生労働省
上記の表を見て分かる大きな違いは以下になります。
- 免許の発行元の違い
- 免許取得までにかかる時間
准看護師免許は、都道府県知事の発行元、看護師免許は厚生労働省が発行元。
そして免許取得までに准看護師は最低2年以上に対し、看護師では最低3年以上、看護学校などで学ぶ必要があります。
この条件からみると、准看護師になるほうが容易だといえるでしょう。
なお試験合格率については、両者ともしっかり学校で学び、卒業できれば合格できる可能性は高いことがわかりました。
責任や役割の違い
准看護師と、看護師の大きな違いとして、現場においての責任や役割があげられます。
准看護師の職務規定については以下になります。
准看護師の責任・役割
- 看護師、医師の指示のもと患者の状態、変化を観察、報告をおこなう
- 患者の家族、権利、価値観を尊重しつつ、患者が安心できるよう安全に看護業務をおこなう
参考:看護チームにおける 看護師・准看護師及び看護補助者の 業務のあり方に関する ガイドライン及び活用ガイド
続いて看護師の現場においての責任や役割についてになります。
看護師の責任・役割
- 准看護師へ療養上の世話の指示を適切におこなう責任
- 自らの判断で方法等を変更・中患者にもっとも負担が少なく、最良の看護を提供
- 患者の状態を客観視し、変化も予測しつつ看護課題の優先順位を的確に判断
- 患者や家族の尊厳、権利、価値観を尊重し、意思決定を支援
- 科学的根拠に基づき、患者の状態に応じた医療計画の立案と提供
参考:看護チームにおける 看護師・准看護師及び看護補助者の 業務のあり方に関する ガイドライン及び活用ガイド
准看護師と看護師の責任、役割の違いは、准看護師は看護師の指示のもと業務をおこなうこと。
一方、看護師は現場において最善な判断、患者への最善な医療計画の立案、准看護師等への指示などの責任ある業務であることが分かります。
准看護師ができる仕事・できない仕事
准看護師と、看護師はできる仕事内容は違うのでしょうか。
結論からいうと、両者の仕事内容については大枠で同じです。
しかしながら、看護師にできて准看護師にできない業務もあります。仕事内容についてどのような業務があるのかを具体的に紹介していきたいと思います。
准看護師ができる仕事
准看護師がおこなう現場での業務は具体的に以下のような業務があげられます。
准看護師ができる業務内容例 |
|
患者のサポートにおける具体的な業務例として
- 体位交換が難しい患者への補助
- 食事や入浴補助
- シーツ交換
- 排泄介助
などがあげられます。以上の業務内容は、看護師、医師の指示のもと適切な業務をおこなっていきます。
業務内容自体は、看護師も同様におこなう業務です。
看護師ができて准看護師ができない仕事
看護師にできて、准看護師にできない業務は何なのか、具体的に説明していきます。
准看護師にはできない業務 |
|
基本的な業務内容は看護師も准看護師も同様ですが、現場への医療指示、医療計画の立案など、指導的な業務はできません。
また看護学の学習過程においても、卒業時の到達目標として以下の能力が求められます。
- 看護師は「根拠に基づき、看護を計画的に実践する能力」
- 准看護師は「看護師の立案した看護計画を基に看護を実践する能力」
学習過程においても違いがあることから、実務においても責任や役割に違いが出ることがわかります。
准看護師の悩み
准看護師は、看護師と業務内容は同じものの、責任や役割が劣っているのではないかと、比較されがちな見られ方をされてしまう場合があります。
実際に准看護師として働いてみると、准看護師ならではの悩みもあるようです。どのようなことが悩みの要因にあがるのか具体的に説明していきます。
働く場所
准看護師は看護師に比べると働ける場所が少ない、といった悩みがあります。准看護師、看護師が働ける場所として以下のような施設があがります。
- 病院、診療所
- 老人ホーム、介護施設
- 訪問看護
働ける場所として准看護師も看護師も大きな違いはありません。
しかし求人によっては看護師限定の募集もあります。
たとえば大学病院などの規模の大きい病院では、ほとんどの場合が看護師を募集しているのが現状です。
しかし、国内では高齢化社会が加速しているため、老人ホームや介護施設での准看護師の求人ニーズは増えています。
介護士等では医療行為はできないため、准看護師が現場にいることは意義があるといえるでしょう。
給料面
准看護師と看護師では、給料面においても比較されがちです。
一例として、従業員数10〜99人規模の施設における女性の平均給与例をあげます。
<単位 万円>
准看護師の年間平均給与 | 看護師の年間平均給与 |
354.5 | 420.8 |
参考:賃金構造基本統計調査
あくまで一例にはなりますが、看護師のほうが明らかに給与が高いことが伺えます。
これは資格そのもののが異なること、医療現場においての責任、役割などから違いが出ると考えられるでしょう。
看護師と比較されがち
准看護師は、仕事の責任、役割から給与の違い、働ける場所も看護師に比べると限定されるので、比較されてしまうこともあります。
しかし、働き続ける中で医療現場従事者としてキャリアをあげたいと思った場合、准看護師から実務を経て看護師になることも可能です。
どのような流れで看護師へステップアップできるのか紹介します。
<准看護師が看護師へキャリアアップする流れ>
准看護師としての実務3年
↓
看護専門学校2年(定時制だと3年)へ通学
↓
看護師国家資格試験 ↓ 看護師資格取得
このような流れで看護師へキャリアアップもできます。そして働きながら看護専門学校へ通う場合、注意点があります。
ライフスタイルによる学校選びが重要で、全日制の学校を選んでしまうと、平日の朝から日中に授業があるため、日中に働いている方は、定時制や半日制の学校を選択するなど考える必要があります。
まとめ
仕事内容に違いはあるのか、業務の責任感や待遇面も違うのか、などこれから医療現場を目指す方が気になる所をご紹介しました。
比較されがちな准看護師と看護師ですが、資格取得までの過程の違いから、おこなう業務は同じものの、現場での責任や役割が異なります。
そして、現場での責任の違いから、給与面や働ける場所においても差が出る可能性は理解しておいたほうがよいでしょう。
しかし、准看護師として実務を積み上げていく中で、より責任のある仕事を目指したくなったり、収入を増やしていきたいと思った時には、働きながらでも看護師資格を取得できます。
また、准看護師は働きながら医療職にキャリアチェンジしたい方、少しずつ医療現場で働きながらキャリアを考えていきたい人などには、よい選択といえるでしょう。